姉の声

オリジナルストーリー

私が小学4年生の時の話。
両親が田舎の法事に出席するので、
当時高校生の姉・優子が夕食を作る事になった。
夕方、居間でテレビを見ていると、庭から、
ザク、ザク──
と、玉砂利を踏む足音がし、
「優子だよ、開けて」
と、姉の声がした。
見ていたのは私の大好きなアニメ番組でテレビの前を離れたくなかった私は、
「開ければいいじゃん」
と答えたのだが、
「優子には無理なの、あんたが開けて」
鍵を忘れたのかなと思い、急いで玄関の鍵だけ開けて居間に戻った。
カーテンが閉まっていて姿は見えなかったが、窓越しに、
「開けたよ」
と言っても、
「ドアを開けてよ」
と、言う。
「鍵は開けたよ」
「早くドア開けてよ」
言い合っているうちにふと気づいた。
姉の声が変だ。
昔のカセットテープに録音した音声みたいに妙にスカスカしているというか……。
不審に思っていると急に静かになった、というより窓の向こうから気配が消えたのだ。
(あれ?)
そう思った直後に、ガチャガチャと音がし、ドアが開いた。
「こら、玄関の鍵が開いてたよ、お姉ちゃんはかけておきなさいって言ったでしょ」
と、買い物袋を手に下げた姉がたしなめるように言った。
「お姉ちゃんが開けろって言ったじゃない」と言っても、姉は知らないよという。

そういえば友達に聞いたことがある。
家というのは一種の結界になっていて、ヒトではないものは勝手に入ってこられない。
だからあの手この手で住人を騙して、入り口を開けさせるのだ、と。
普段の姉とは違う声質、なにより自分の事を『優子』なんて言わない。
あれは姉ではなかったのだ。
あのときドアを開けていたら何が入ってきたのだろうか。

タイトルとURLをコピーしました