これも私が三歳の頃の記憶です。
朝、起きると母親に、
「昨日の晩、そこで火事があったんだよ」と言われたのです。
そこ、と指を差した所に部屋の柱があり、小さく焦げた跡のようなものがあったので、昨夜、この柱から火が出て、消防士の人が消しに来たんだ、と思ったのです。
実際そんなわけがなく、母親が言った「そこ」というのは、近所の家のことだったのですが……。
その柱の焦げと見えたものは、今考えれば木の節だったのでしょう。
ただ、私にはそれまで、そんな焦げがあった覚えはなく、突然現れたように見えたのです。
まあ思い違いなのでしょうが、私が眠っている間、柱が燃えて消防士さんがドタバタと部屋を出入りしていた場面を想像して、へえー、と感心していたのを覚えています。