オリジナルストーリー

因果応報

高校二年の二学期。年の瀬も近づいたある寒い朝のこと。「はあ……間に合うかなー」私は白い息を吐きながら独りごちた。 いつも駅までは自転車なのだけど、今朝いつものように乗ろうとしたら、タイヤの空気が完全に抜けていた。パンクしたのだ。ここ最近、タ...
オリジナルストーリー

レインコートの女

友達の家へ遊びに行った帰りだった。『それじゃ優香、気をつけて帰りなね』「ありがと、また明日ね」別れてからもまだ話し足りなくて、携帯で友達とお喋りしていて、やっと切ったところだ。空は太陽の名残が微かに残っているだけで、周囲は夕闇に包まれている...
オリジナルストーリー

公園の女

高校の登下校の途中に、駅から自宅までに児童公園があった。そこを通るとショートカットできるので、いつも通り抜けていた。 日がかなり短くなってきた一年生の二学期半ば頃。その日は所属している剣道部の練習で少し遅くなり、すでに陽は落ちて暗くなってい...
オリジナルストーリー

出るという民宿

高校一年の夏。所属している剣道部の初めての合宿でのこと。 スポーツセンターの道場を借りての四泊五日のスケジュールだ。宿泊するのはスポーツセンターから徒歩五分ほどの民宿だった。合宿とはいえ、やはり泊まりがけでどこかへ出かけるという、非日常体験...
オリジナルストーリー

落ちてくる男

俺(水瀬優弥)が高校一年生の時の話。そろそろ高校生活にも慣れてきた、初夏に入った日の通学途中。なんとなく気になって見上げると、ビルの屋上に人影が立っていた。思わず立ち止まり、後ろから歩いてきたサラリーマンがぶつかりそうになって、舌打ちをしな...
オリジナルストーリー

回廊の家

俺(南川圭介)は売れない物書きだ。一応ホラー作家だが、それだけでは食えないので別ペンネームで官能小説を書いたり、一文字一円からの副業webライター、月の支払いが苦しいときには派遣や日雇いのバイトとなんでもこなす。そんなだから、三十歳になって...
オリジナルストーリー

作業着の男

私がその『存在』に気づいたのは、今のマンションに引っ越してきてすぐのこと。仕事から帰ってきて、オートロックの外玄関から中に入ってきたときだ。エスカレーターホールに続くロビーに、男性が壁に向かってしゃがみ込んでいるのを見た。彼は作業着を着てい...
オリジナルストーリー

異界からの少女

私は、夫と2人の子どもがいる4人家族の主婦です。数年前に建売でしたが念願の新築一軒家を購入し、いまの土地へ引っ越してきました。それからまもなく、家の中でおかしなことが起こったのです。ある土曜日のことでした。夫が休日出勤で、いつもどおり朝起き...
オリジナルストーリー

おぶさる人

高校1年のある日。ぼくがその人を見かけたのは学校の帰りだった。高速道路の高架下の巨大な交差点、そこに架かっている歩道橋を渡っていたときだ。歩きながらなんとなく視線を下に向けたとき、信号待ちをしている年配の男性がいたのだが、その背後に白い人影...
オリジナルストーリー

みいつけた

私には不思議な記憶があった。小学校に上がる前、同い年くらいの仲良しの女の子がいた。あれは誰だったっけ……あんなによく遊んだのに、幼稚園や小学校に、その子がいた記憶はない。卒園や卒業アルバムを見ても、その子はいなかった。いつから、顔を見なくな...